確率漸化式のわかりやすい解説!
皆さん、「確率」の単元は習いましたか? また、「数列」における「漸化式」の解き方はご存知ですか?
どちらも答えが「はい」なら、以下の問題を原理的には解けるはずです。
<問題>1もしくは2もしくは3が同一の確率で出るルーレットを回すことを考える。\(n\)回ルーレットを回したとき、出た全ての数字の積を\(P_{n}\)と表記し、\(P_{n}\)を5で割った余りを\(Q_{n}\)と表記する。例えば、\(n=3\)で、1,2,3が出たとき、\(P_{n}=6\)であり、\(Q_{n}=1\)である。
\(Q_{n}=2\)となる確率を\(n\)を用いて表せ。
・・・・・・と言われても、なかなか難しいですよね。
「\(n\)回目なんて分かるわけ無いだろ!」と思うかもしれません。
実際、確率の考え方だけではこの問題は解けません。
そこで、補助具として登場するのが、「漸化式」です。
なぜかというと、「漸化式」と初項がわかれば、数式の一般項は多くの場合わかります。(入試だと、必ず「解ける」漸化式になるはずです)
次に、漸化式の作り方はどうだったでしょうか。
\(n\)回目と\(n-1\)回目でどのように「状態」が変化しているか、を見れば漸化式は作れるはずですね。
ここで、「状態」の変化を見るために、起こりうる全ての「状態」を記号で置いておきましょう。
求めたいのは、\(Q_{n}=1\)となる確率ですが、\(Q_{n}\)は5で割った余りなので、\(Q_{n}=0,1,2,3,4\)となります。
ということで、\(Q_{n}=0\)となる確率を\(a_{n}\)、\(Q_{n}=1\)となる確率を\(b_{n}\)、\(Q_{n}=2\)となる確率を\(c_{n}\)、\(Q_{n}=3\)となる確率を\(d_{n}\)、\(Q_{n}=4\)となる確率を\(e_{n}\)と置くことにします。
求める確率は\(c_{n}\)です。
それでは次に、\(a_{n}\)と\(b_{n}\)と\(c_{n}\)と\(d_{n}\)と\(e_{n}\)について、\(n-1\)回目との関係を見ていきましょう。
\(a_{n-1}\)からどう動くかというと、(今あまりは0)
ルーレットで1が出たら\(a_{n}\)
ルーレットで2が出たら\(a_{n}\)
ルーレットで3が出たら\(a_{n}\) となります。(あまりも出た数字をかけたものになります)
\(b_{n-1}\)からどう動くかというと、(今あまりは1)
ルーレットで1が出たら\(b_{n}\)(あまり1)
ルーレットで2が出たら\(c_{n}\)(あまり2)
ルーレットで3が出たら\(d_{n}\)(あまり3) となります。
\(c_{n-1}\)からどう動くかというと、(今あまりは2)
ルーレットで1が出たら\(c_{n}\)(あまり2)
ルーレットで2が出たら\(e_{n}\)(あまり4)
ルーレットで3が出たら\(b_{n}\)(あまり6なので1になる←5で割っているので) となります。
\(d_{n-1}\)からどう動くかというと、(今あまりは3)
ルーレットで1が出たら\(d_{n}\)(あまり3)
ルーレットで2が出たら\(b_{n}\)(あまり6→1)
ルーレットで3が出たら\(e_{n}\)(あまり9→4) となります。
\(e_{n-1}\)からどう動くかというと、(今あまりは4)
ルーレットで1が出たら\(e_{n}\)(あまり4)
ルーレットで2が出たら\(d_{n}\)(あまり8→3)
ルーレットで3が出たら\(c_{n}\)(あまり12→2) となります。
以上より、次の漸化式を得ることができます。
\[a_{n}=a_{n-1}・・・①\]
\[b_{n}=\frac{1}{3}b_{n-1}+\frac{1}{3}c_{n-1}+\frac{1}{3}d_{n-1}・・・②\]
\[c_{n}=\frac{1}{3}b_{n-1}+\frac{1}{3}c_{n-1}+\frac{1}{3}e_{n-1}・・・③\]
\[d_{n}=\frac{1}{3}b_{n-1}+\frac{1}{3}d_{n-1}+\frac{1}{3}e_{n-1}・・・④\]
\[e_{n}=\frac{1}{3}c_{n-1}+\frac{1}{3}d_{n-1}+\frac{1}{3}e_{n-1}・・・⑤\]
一般項を得るためには初項が必要なので、それぞれ求めておきましょう。
\(n=1\)のときなので、ルーレットを1回回したときを考えればOKです。
\(a_{1}=0\)、\(b_{1}=\frac{1}{3}\)、\(c_{1}=\frac{1}{3}\)、\(d_{1}=\frac{1}{3}\)、\(e_{1}=0\)
ここまで準備が整えば、後はこの連立漸化式を解くだけですね。
ここから先は「慣れ」です。今回は足し引きによって解ける漸化式に変形します。
\(①\)より、\(a_{n}=0\)は明らかです。
そして、確率の合計は1であるので、次式を得る。
\[b_{n}+c_{n}+d_{n}+e_{n}=1\]
よって\[b_{n}+c_{n}+e_{n}=1-d_{n}・・・⑥\]
次に、\(③-④\)により、\[c_{n}-d_{n}=\frac{1}{3}(c_{n-1}-d_{n-1})\]
\(c_{1}-d_{1}=0\)であるから、\(c_{n}-d_{n}\)を一つの数列と考えて、\[c_{n}-d_{n}=0\]
したがって、\(c_{n}=d_{n}・・・⑦\)
③と⑥により、\[c_{n}=\frac{1}{3}(1-d_{n-1})=\frac{1}{3}(1-c_{n-1})\]
(⑦より)
これを整理すると\[c_{n}=-\frac{1}{3}c_{n-1}+\frac{1}{3}\]
ほら、解けそうな形になった!!
これの解き方は流石に割愛します(特性方程式をつくりましょう)
解くと、こうなります。
\[c_{n}=\frac{1}{12}\cdot (-\frac{1}{3})^{n-1}+\frac{1}{4}\]
答え: \(\frac{1}{12}\cdot (-\frac{1}{3})^{n-1}+\frac{1}{4}\)
いかがだったでしょうか。確率漸化式の問題の解き方がなんとなく分かってもらえたでしょうか。
求めたいものがわからないときは全部の場合を置いてしまうことが大切です。
漸化式の解き方は慣れていきましょう。どうせパターンです。
この記事があなたの数学に少しでもいい影響を与えられたら幸いです。